Gitanの趣味

ひたすら趣味の道を走っています(ニヤリ)

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感傷と諦観 

 どんな種類の小説でも、小説を読むことは大好きだ。しかし、漠然とした好みのようなものは、人間だからやはりあるわけで、感傷過多の小説は好みではない。人間がひねくれているせいかもしれないが、殺伐とした空気が濃厚な作品が大好きである。
 だから、たとえば幼少期の体験を流麗な筆致で飾り立てた(ちょっと悪意を感じさせる表現だが)きらめくような作品よりも、素っ気ない文章で残酷な現実を、冷徹に描いた作品に心惹かれる。
 だから、笹沢佐保さんの『木枯し紋次郎』は好きだった。救いのない人間の姿がエンターテイメント的誇張はあるものの、そこには描かれていた。あれはきっと笹沢佐保という人の人生観だったのだろう。
『詩人の家』だったと思うが、笹沢さんの自伝的な作品がある。もうずいぶん前に図書館で読んだもので記憶もあいまいだが、たしかその中に、自分は運命論者だというような記述があったよう気がする。
 運命論者というのをどう定義するかはともかくとして、笹沢氏の生み出しヒーロー木枯し紋次郎は究極の運命論者だった。かれは生まれてすぐ殺されかけた。生き残れたのは自分の力ではなかった。死のうが生きようがどうでもいいと言い切れるのは、ようするに成行きにすべてを任せているということだ。
 笹沢佐保という人のなかにはおそらくそういった諦観が常にあったのだろう。と、こう書くこともぼくの嫌いな感傷である(笑)。深い諦観が心にあると大見得を切っても、どこかに夢や希望をもっているのが人間だろう。世は無常と悟り顔で呟いてみても、

 捨て果てて身儚きものと思いしも 雪の降る日は寒くこそあれ

 と西行法師も読んでいる。流れ者だって洗面用具は必要だ。流れ者に女はいらねえ、女と一緒じゃ歩けねえ、といったのは渡哲也さんだったが、かれ以外の人間はたいてい異性が必要なのだと矢作俊彦さんがその原作を書いた『気分はもう戦争』のなかで呟いている。

 感傷を嫌った、というか感傷と無縁の小説を書いたダシール・ハメットという作家について小鷹信光さんは、かれが抱えていた深い諦観について、
「なんという人生だ」
 と、つぶやいて筆を折ったと著作の中で書いていた。ハメットには、自分が望んだ人生はこんなものではなかったという思いがあったのだという。実際に、ハメットがそんなつぶやきを洩らしたのかどうかはわからない。
 ハメットはある時点を境に小説を書かなくなった。かれが筆を折ったのは悟ったからでも人生の本質を掴んだからでもないと思う。みもふたもなくいってしまえば、生涯遊んで暮らせるだけの金を『マルタの鷹』を含む作品群の成功によって手にしたからだと思う。
 ハメットの晩年を共にしたリリアン・ヘルマンがそのようなことを書いていたはずだ。かれが書いたのはあふれ出る創作への情熱に背中を押されたからではなく、金のためだったと。その金がおそらく生涯にわたり入ってくるとわかったとき書かなくなった。
 作家という人種がどういうものか、身近にいないのでわからないが、書くということに憑りつかれた人だというイメージがあった。お金はもちろん必要だろうが、
「金のために書いているのさ」
 と、いうのは一種の気取りだろうと思っていた。書かずにはいられないから書いているのであって、仮に世に出られなくてもかれ(あるいは彼女)は書き続けていたはずだ、と信じて疑わなかった。
 しかし、実際に生涯の収入が保証されるらしいと知ったとき、筆を折った作家がこの世界に存在したというのは驚きである。実際にそうであったのかどうかわからないが、そう感じさせるほどにハメットという作家の持っていた異質な何かには惹きつけられる(現実にはハメットの目論見は外れ晩年は困窮する)。
 とはいうものの、人間は複雑なものでひとつの要素だけで成り立つはずもないことは、一応理解しているつもりだ。感傷も諦観もそれ自体がひとつのフィクションだろうということも、薄々ながら理解しているつもりだが……。
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Posted on 2011/05/15 Sun. 07:35    TB: 0    CM: 0

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