Gitanの趣味

ひたすら趣味の道を走っています(ニヤリ)

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血の匂いと文学 

 いってみれば方法論の勝利だろう。重厚な語りで荒々しい暴力を描いている。哲学的な言葉で暴力を包み込んでいるともいえる。だからといって全編を貫く暴力描写がぬるくなっているなどということはまったくない。稀代の筆力を持った著者のことだ。荒々しく残酷な暴力を、容赦なく描ききっている。
 いま話しているのはコーマック・マッカーシーの『ブラッド・メリディアン』についてである。内容には詳しく触れない。日本風に作品を分類すれば、なるほどこの作品は純文学である。が、同時にこの作品は西部劇でもある。それ以上でも以下でもない。
 開拓時代のアメリカの現実はすでに『ソルジャー・ブルー』のなかで描かれている。アメリカがその開拓史の中で先住民になにをしたのか。まともな神経の持ち主なら気が滅入る。たぶん滅入ると思う。
『ブラッド・メリディアン』は『ソルジャー・ブルー』の延長線上にある作品ではあると思うが、個人的にはあの傑作西部劇よりも『ワイルドバンチ』に近い位置にあると思う。つまりこの作品は、開拓時代の西部に生きた荒々しい人間たちの物語だ。集団時代劇ならぬ集団西部劇である。ぼくたちは工藤栄一を思い出そう。
 ありふれた西部劇のストーリーに乗せて深遠な哲学を語る。そういったところではないか。うまいやり方だと思う。思い出すのは『薔薇の名前』だ。探偵小説風の物語に、ヨーロッパにおけるキリスト教の暗黒面を描いたあの物語も、考えてみると同じ構造を持っていた。
 つくづくコーマック・マッカーシーはうまいと思う。たとえば『血と暴力の国』は犯罪小説風の純文学、あるいは純文学風の犯罪小説だった。『ザ・ロード』はSF小説と高度な純文学の合体だった。『マッドマックス』と『子連れ狼』を不条理に合体させたような物語といえなくもない。
 そして、これ『ブラッド・メリディアン』である。サム・ペキンパーが好んで描きそうな開拓時代の西部に生きた男たちの戦いの記録といった趣だ。ただ、ここにはペキンパー好みの感傷はない。殺伐とした暴力が狂ったように吹き荒れる荒野があるだけだ。
 余談だが、ペキンパーはあのブラッドベリの傑作『何かが道をやってくる』を映画化したがっていたときいたことがある。もしこの作品に出会っていれば映画化したがったのではないか。残念ながらペキンパーはこの作品が世にでる一年前、1984年に亡くなっている。
 それはさておき、売れる小説というのはさすがだと思う。作者にそういう下心があったかどうはわからないが、少なくともある程度の販売部数がなければ作家は生活していけない。どれほど重大なテーマを扱っていても、それが読者を無視したか、ひどく未熟なものならば、誰も読んでくれない。読んでくれなければただの自己満足だ。
『ゴッド・ファーザー』を書く前のマリオ・プーゾォは親戚知人に生活費を借りて、売れない小説を書き続けていたという。いくら専門家に評価されても、生活が成り立たなくては仕方がない。
 エンターテイメント大国アメリカはさすがである。純文学といえども単なる自己満足ではお話にならないようで、映画化されて、客が喜ぶ程度の物語性はどこかで保証されていなければならないのだろう。
 こういう姿勢は大好きである。売れるものが一番いいなどというつもりはさらさらないし、売れなかったからだめだなどとはさすがにいわない。ただ、ひとつの評価軸として、多くの読者を獲得し、映像作家にある種の刺激を与える作品があり、そういった作品は個人的な好みとは別に、やはり認めるべきだと思っている。
 映像作家云々と書いたが、『ブラッド・メリディアン』はその点も実にうまく、見事に絵になるように書いている。映画化の話があるらしいが、1985年の作品なら20世紀の終わりに映画化されていてもよかったような気がする。
 原文を読めるほどの語学力がないので、この文章のほんとうの味わいを知ることができないのが、まことに残念ではあるが、ひどく読みにくい文章であるにも関わらず、絵が浮かんでくるから大したものである。
 この作品を日本語で書きなおした黒原さんの筆力には脱帽である。まちがいなくこれは傑作である。
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カテゴリ: 読書

テーマ: 雑記 - ジャンル: 小説・文学

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Posted on 2011/05/02 Mon. 21:37    TB: 0    CM: 0

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