Gitanの趣味

ひたすら趣味の道を走っています(ニヤリ)

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ふたつの怪物 

 最近とんでもない勘違いに気づき、大いに恥じ入っている。何かといえば韓国映画の『グエムル 漢江の怪物』である。2006年に公開されているから、かれこれ5年前の映画だ。すでにご覧になった方もいると思う。
 公開当初からこの映画は日本のアニメ映画の剽窃であるという噂があった。怪物の造形を見たときぼくもそう思った。ストーリーがどうのという前に、物語の核となる怪物がどこかで見たとことがあると感じさせたのは、剽窃の噂を立てられる原因になったと思う。
 最初にとんでもない勘違いだったと書いたが、やや弁解すればこちらが勘違いしても致し方ないほど、両作品の怪物の造形は似ていた。その点についてだけいえば、剽窃の噂がたっても仕方がないかなと今でも思っている。なぜあれほど似てしまったのか、よくわからない。
 とにかく第一印象というのは恐ろしいもので、怪物が似ていたばかりに、《日本アニメ映画剽窃説》を頭から信じてしまった。最近になって、この作品を見る機会を得た。驚いた。これは『パトレイバー』とは全く別物である。
 確かに怪物の造形は似ていたかもしれない。だが、映画としては全くの別物、あるいは仮に似ている部分があったとしても、それを認めてさえ、この映画をぼくは支持する。回りくどい言い方はやめよう。ようするに、
「ぼくはこの映画が好きだ」
 と、いうことだ。これは非常に面白い映画だ。きわめてユニークなギャグ映画だ。すでに観られた方もいるかと思うが、ストーリーに触れることは極力避けることにする。とにかく、これは怪獣映画であると同時に、家族映画である。それも相当歪な家族映画だ(さらにいえば反米映画でもある)。
 ある日、漢江から怪物が現れる。その怪物の誕生には米軍が関わっている。怪物はひとりの娘を連れ去る。奪われた娘を取り戻そうとする家族と怪物の壮絶な闘い――ではない。滑稽な悪あがき。
 怪物誕生にかかわった米軍が、事実を隠ぺいしようとして政府にも圧力をかける。この家族は一種のドン・キホーテだ。巨大な権力に戦いを挑むといっても、この家族には戦いを支える実力などどこにもない。窮鼠猫を噛むというやつで、追いつめられ、一種の狂乱状態になっているのだ。
 この構図はよくあるパターンでもある。孤立無援で巨大な敵に挑むという物語は、目をつむって石を投げても当たるくらいたくさんある(笑)。やりようによってはどんな活劇にでもできたはずなのだ。観客に感動の涙を流させることもできたはずだった。
 が、この監督ポン・ジュノはそれをしなかった。では何をしたか。驚いたことにベタなギャグ満載で描き切ったのである。しかも凄いことにこのギャグがまったく笑えない。滑りっぱなしだ。笑えないギャグほど惨いものはない。空気がしんしんと冷えていく。
 滑るギャグの惨さは、そのまま米軍が生み出した怪物に孤立無援で闘いを挑む家族の運命の惨さに通じる。少なくともぼくにはそのように見えた。さらにこの物語に登場する出演者たちの顔が凄い。
 韓流といえば美男美女が相場だが、この映画に登場するのは美男美女とは程遠い風采の上がらない男女である。女の子は普通っぽい可愛らしさがあるが、男性陣は全滅である(笑)。いや、これも好みによるかもしれない。とにかく絶対的な美男美女でないことはまちがいない。
 たぶん、この映画は好みが分かれると思う。芸術作品はどんなものであれ、最終的には好きか嫌いかだ。この作品を認めないという方がいてもそれはそれでかまわない。ぼくは大好きだというだけのことだ。
 笑えないギャグをちりばめつつ、怪物と壮絶なのか愚かなのかわからない戦いを繰り広げ、その行き着く先に、恐ろしく苦い結末が待ち受けている。あの結末を用意しなければならなかった必然性が監督にはあったのだろうか。ぼくにはわからない。ただ、あのラストを選んだ監督のセンスはただ事ではないと思う。
 それともうひとつ、この監督は人間の顔を並べるのが好きなのだろうか。そう感じる画面がところどこに見られた。とにかく『グエムル 漢江の怪物』は、みるべき価値が十分にある作品だと思っている。
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Posted on 2011/02/10 Thu. 23:12    TB: 0    CM: 0

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