Gitanの趣味

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見事な『切腹』 

 四月になったが、この前のブログの続きである。『スラムドックミリオネア』のことではなく、その中でちらりと触れた『切腹』である。イギリス映画を見ながら、日本の時代劇を思い出すのは我ながら奇異なことだと思うが、まあそういうこともあるだろう(笑)。
『切腹』という映画をいったいどれだけの人が知っているのだろう。1962年の小林正樹監督作品である。主演は仲代達也さんだった。内容は一口でいうと武士道なんて幻想だよ、はやく目を覚ましなさい、というお話である。
 武士道が幻想かどうか、ぼくなどには判断のしようがない。話がちょっと横道にそれるが、侍像というのは時代とともに変化しているもので、これこそ侍だ、といいきれるものは実はない、とぼくは解釈している。
 露骨ないい方をすれば、侍というのは武装農民集団の親玉みたいなものである。本来は極めつけのリアリストだった。たとえば戦国時代、主君と家臣の関係は実務的なものだった。この主のもとにいれば自身の利益になると思えばこそ懸命に働く。だが、こいつはだめだとなれば、見限ることもありだった。
 黒澤映画ではないが、
「裏切り御免!」
 である。
 武士は二君にまみえず。そういった主君に忠誠を尽くす侍像が求められるようになったのは江戸時代に入ってからのことだ。ようするに幕府が支配しやすいように、荒っぽくてリアリストだった侍たちを教育した結果のことだった。
 たぶん幕府の思惑は成功したのだろう。いつのまにか後世のぼくたちまで、侍というのは形而上的に生きて死ぬというようなイメージを持つにいたった。いつかもこのブログで書いたが、『鸚鵡籠中記』を読めば、われわれのイメージにある侍と現実の侍はずいぶんちがうということがわかる。
 有名な忠臣蔵だが、あれが戦国時代なら、あの殿様はまちがいなく見捨てられていただろうということだ。家臣の暮らしも顧みず一時の怒りに我を忘れるような主君のもとでは、とても働けないと戦国時代の侍なら考えたことだろう。

 話を『切腹』に戻す。とにかく残酷な話である。江戸時代だ。生活苦にあえぐ浪人がとある屋敷の前で切腹をさせてくれという。本気で切腹する気などない。嫌がらせをして何某かの金をせびろうという魂胆なのだ。
 浪人の魂胆を見越した屋敷側は実に残酷なことをする。ほんとうに切腹をさせようとするのだ。浪人は焦りはじめる。しかし逃げることもできない。屋敷側は腕利きの侍三人を揃え、浪人の退路を断つ。
 ここから凄まじくなってくる。浪人はほんとうに切腹するしかなくなる。だが、浪人の刀は竹光だった。生活に追われ、刀はとっくの昔に手放していた。屋敷側はその竹光で浪人に切腹させようとする。この場面は凄まじい。切れない竹光で切腹するのである。長く残酷場面だ。切腹というが、それは殺人である。浪人は無残な殺され方をする。
 余談だが、『必殺仕事人』のなかでこの場面を使ったことがあった。伊吹五郎さんがでていたシリーズで、まだ若い秀さんが、竹光腹を切らされる侍の仇を討とうとするような話だったと記憶している。
『切腹』に話を戻す。その浪人者が殺された後、初老の浪人が訪ねてきて、また切腹をさせてくれという。屋敷側は同じことをしようとうする。屋敷内に招かれた浪人は介錯人に腕利きの三人を指名する。このあたりから、
「ん?」
 と、いう感じになってくる。どうして浪人はその三人を指名したのか。偶然かそれとも何か理由があるのか。三人を呼び出そうとするが、三人とも急病で不在であるとわかり、さらに、
「え?」
 という感じなってくる。
 切腹させてくれといってきた浪人は薄笑いを浮かべている。何かが起きているらしいということはわかる。いったいなにが起きているのかと興味を引きつつ、浪人は自分について語りはじめる。……と、まあこんな感じである。

 感心したのは、この作品が扱っているテーマにではなかった。シナリオの見事さに感動した。映画『切腹』で扱われているテーマはもちろん重く、語るべき価値は十分にあると思う。全面的に賛成しろといっているのではない。色々なことを考えられるテーマであるといっているのだ。
 しかしとにかく、ぼくにとってこの映画は語りがあまりにも見事だったというその一点につきる。最初の竹光による切腹がすでに衝撃的だった。そこから二人目の切腹志願者があらわれ、最初に無残に殺された侍とは無関係かと思いつつ眺めていると――
「あ!」
 と、いうことになる。
 物語の進め方がべらぼうにうまいのである。見事な力技というほかない。シナリオは橋本忍さんだった。さすがである。はじめてこの映画を見たとき、暗くて重い映画だなあと思いつつ、最後まで見せられてしまった。ラストも決して爽快感を与えてくれない。当たり前か。しかし、溜息が零れるほど見事な構成なのだ。
 はっきりいえば、この手の映画は好みではない。『武士道残酷物語』だとかやたらと侍をけなす映画があった。あれは侍をけなすというよりも階級社会の矛盾を描こうとする意図があったように思えてならないときがある。
 誰かが誰かを足蹴にしたり、支配したり、搾取したりする時代がいい時代とは思えないが、だからといって自分の好みで時代に色をつけるのはどうかと思う。それぞれの時代にそれぞれの苦悩もあれば楽しみもあったと考えるのが普通だ。こんなことをいうとお叱りを受けるかもしれないが、世の中のことはすべて相対的なものだと思っている。
 ぼくがなにを考えているかはどうでもいい。暗くて残酷な映画は好きではない。『切腹』は間違いなく、暗くて残酷で、血みどろの映画だった。しかし、最後まで見せられたのはようするに見せ方がうまかったからだ。志も必要だが、技術もおろそかにできない。
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カテゴリ: 映画

テーマ: 映画感想 - ジャンル: 映画

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Posted on 2010/04/07 Wed. 13:03    TB: 0    CM: 0

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