Gitanの趣味

ひたすら趣味の道を走っています(ニヤリ)

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呼吸の問題――黄昏に歌え 

 小説家なかにし礼の『黄昏に歌え』という作品は、正直どう評価していいのかわからない。内容に詳しく触れることは差し控えるが、非常に面白い部分と、ついていけない部分がある。自伝的な部分は興味深く読めるが、妙な女性が登場する場面は少しも面白くない。
 もっともこの女性との会話という形で、作詞家という人種の、言葉の閃く瞬間の心理が語られる。だからそれなりに機能しているのだろう。が、はたしてこの女性を登場させる必要はあったのだろうか。作詞家に言葉が降りてくる瞬間を、普通に描いても面白くないと思ってこういう演出をしたのか、それともこれは実体験なのだろうか。
 もし、実体験ならこの人はかなりやばい人生を送ってきたことになる。兄貴の借金どころの話ではない。得体のしれないカルト集団と関係があることになってしまう(笑)。まさかそんなこともないとは思うが、どうだろう。
 普通に自伝的な小説を書いても面白くないと思い、無理に小説にしようとしてこんな仕掛けをしたのだろうか。もしそうだとしたら、ぼくはこんなものは無用だと思う。映画『異人たちとの夏』のなかで、名取裕子さんの女幽霊を何となく邪魔だと感じるのと同じことだ。
 もちろんこれは個人的な考えだ。そうではないと思う人がいても少しもかまわない。『黄昏に歌え』の得体のしれない女性も、『異人たちとの夏』の一生懸命邪悪になろうとしている女幽霊も、必要だと思う人がいてもそれはそれでいい。ぼくはなくてもいいと思うし、むしろない方がいいような気さえする。
『黄昏に歌え』の業界裏話的な部分をぼくは面白いと思った。ひとりの人間の成功と挫折と復活を描いたものとして読んでもいい。今現在不遇のなかでもがいている人がこれを読めば、人生はそう捨てたものでもないと思えるかもしれない。「明るい日」と書く明日があるような気持ちになれるかもしれない。

 この作品の中で美空ひばりに触れている部分がある。美空ひばりに対しては、ほとんど崇拝に近い感情をもっているので、特に面白く読んだ。美空ひばりの異様なうまさについて具体的に語っている。
 なるほどと思わされたのは、美空ひばりの呼吸のうまさについて語っている部分だった。「美空ひばりの天才性」と、なかにし礼は書いている。その天才性の第一にあげているのが呼吸法の異常なうまさだ。いかに性能のいいマイクを使用しても、ひばりの息を吸う音は拾えなかったという。
 ほかにも「美空ひばりの天才性」については色々と語られているが、印象に残ったのは、この呼吸法のくだりだった。音程を外さない、リズム感がいい、感情が豊かだ、等々、ひばりの歌のうまさを語る言葉はいくらでも出てくるが、呼吸というのは盲点だった。
 楽器は多少弾けるが、歌の方は全く苦手で、カラオケにも行かない。歌がうまいというのはぼくにとってひとつの憧れである。声を出すためには息を吸わなければならない。基本的なことなのだが、その基本的な部分に天才が宿っている。感動するしかない。
 この作品の中には、どん底の日々も描かれているが、売れっ子作詞家としての絶頂の日々も描かれている。フェリーニの『甘い生活』さながらの暮らしだ。世の中がまださほどに豊でなかったころの贅沢は、格別な味があっただろう。運もあったかもしれないが、基本、自分の才能によって掴み取った『甘い生活』なら、誰に憚ることもない。
 そういった暮らしを羨ましいとは思わない。いや、少しは思うが、まあそれほどでもない。自分にもこの先、チャンスがないわけではないと思うからだ(笑)。それに健康問題がある。退廃的な暮らしは楽しいかもしれないが、健康にはよろしくない。
 ぼくも健康を気にしなければならない年齢になってしまった。『甘い生活』生活とは縁がないまま今に至り、仮にこの先幸運が訪れたとしても、酒池肉林を試す前に血圧と心臓の具合を気にしなければ行けない。
 よし、『甘い生活』は羨ましくないとしよう。だが、美空ひばりのレコーディングに立ちあい、直にその歌を聴いているというくだりは、正直羨ましいと思った。天が与えたとしか思えない唄声を間近で聞ける幸運には、そうそう巡り合えるものではないからだ。
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カテゴリ: 読書

テーマ: 読書 - ジャンル: 小説・文学

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Posted on 2009/06/11 Thu. 19:33    TB: 0    CM: 0

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