Gitanの趣味

ひたすら趣味の道を走っています(ニヤリ)

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時の狩人 

 NHKの『タイムスクープハンター』という番組が大好きである。何が好きか。話し言葉である。登場人物たちが話しているその時代に使われていたであろう日常会話が実にわからなくていいのである(笑)。
 歴史関係の本を読んでいると、たとえば織田信長は尾張の言葉(名古屋弁)で話していたというような記述に出会うことがある。当たり前といえば当たり前の話なのだが、妙に感心してしまう。
 大河ドラマの悪しき影響だ(笑)。戦国時代の武将は全員、いまでいう標準語に近い言葉で話していたような気になるが、絶対にそんなことはなかったはずだ。都にでも行けば違ったのだろうか、普段はおそらく舌が粘るようなお国言葉で会話をしていたのだろう。
 ちょっと脇道にそれるが、以前、日本語は非常に複雑だという話をきいたことがある。複雑というのは文法的にどうこうということではなく、地域差の激し言語で、たとえば青森の方言を話す人が鹿児島の方言を聞けば、それこそ、
「異国の言葉に似て不思議」
 と、『桃色吐息』のような印象を持つのではないか。逆もありうる。これも以前きいたことがあるのだが、例えばヨーロッパの言語の中には、せいぜい東京弁と大阪弁程度の違いしかないものもあるという。
 ヨーロッパ言語の例を前提にいえば、青森の言葉と鹿児島の言葉を日本語というひとくくりで納得させるのは、実はかなり無理があるのではないか。地域によって言葉が通じなくては、近代国家など夢のまた夢だ。だから維新後、大急ぎで標準語という一種の人工語を明治政府はこしらえた。
 井上ひさしさんの『国語元年』だったと思うが、いわゆる標準語を創ろうとした官吏の、抱腹絶倒の、しかし悲しい冒険物語がある。言葉は面白い。『タイムスクープハンター』の面白さも言葉によるところが大きい。ぼくにとってはそうである。
 方言の話ではない。過去の話し言葉だ。とにかく何気に標準語かそれに近い言葉をつかって生活しているぼくには、『タイムスクープハンター』に登場する過去の話し言葉はとても魅力的だ。
 未来人(もしくは現代人)が過去にいくという物語の違和感についてはこれまでにも何度か触れた。この種の話題になると度々使わせていただいているあの『戦国自衛隊』のように(笑)、現代人が過去に行くのではなく、過去の方が現代にやってきたという居心地の悪さがこの手の物語にはつきものだった。
 そういったものは『タイムスクープハンター』には少ないように思う。なぜ少ないのか。そこに言葉の問題があると今回気づかされた。もし、『戦国自衛隊』に登場する侍や農民が、当時の話し言葉で会話し、未来からやってきた自衛隊員と簡単に意思疎通ができないという場面があれば、あるいはリアリティはぐんと増していたかもしれない。
 どんなに頑張ってみても、現実に過去の時間をそのまま再現できるわけがない。ただそこにいかにも当時いたような人々が登場すれば、飛躍的にリアリティが増す。問題は当時ほんとうにいたような人間というのはなにかという点だ。
 最初に言葉ありき――ではないが、結局、人間を形作っているのは言葉なのだろう。だから様々な時代で人々がどんなふうに話していたかは、もしかすると天正年間の山城が実際はどんな形をしていたかということよりも重要かもしれない。
 映像的リアリティというのはなにも過去をそのまま再現することではないと黒澤明が語っていたことを思いだす。どれくらいそれらしく描けるかということなのだという。その点『タイムスクープハンター』は、実にそれらしく描いているように思える。話し言葉を再現しようとすることでリアリティを生み出したのだと思う。
『のろしを上げよ』で登場人物たちが喋っていた言葉。平安時代の日本人は、なるほどあんなふうに日本語を喋っていたのかと感心して番組を観ていた。字幕が出なければわからない日本語だったが、それがよかった。
 ずいぶん前に見た映画だが、『ジパング』という作品で冒頭に登場する甦った古代の王が話す日本語を思い出した。平幹二朗氏だったと思うが、かれが演じた王は、ズーズー弁のような言葉で喋っていた記憶がある。古代日本語はズーズー弁に近かったという説は『砂の器』で広まった(と、ぼくは思っている)有名な話である。
 NHKのある意味で果敢な試みには拍手を送りたい。こういった視聴率が稼げるのかどうかわからないような、一種博奕的な番組は民放ではおそらく作れないだろう。NHKの存在価値がここにある。
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カテゴリ: テレビドラマ

テーマ: TV番組 - ジャンル: テレビ・ラジオ

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Posted on 2011/06/17 Fri. 17:21    TB: 0    CM: 2

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