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Gitanの趣味

ひたすら趣味の道を走っています(ニヤリ)

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嘘とほんとの境界線――歴史劇と時代劇 

 個人的な意見だが『七人の侍』は時代劇ではないと思っている。あれは歴史劇である。いや、ほんと。もちろんこれは批判ではない。あれは掛け値なしの傑作である。好きか嫌いかは好みの問題だが、もしあの映画が嫌いだという人がいれば、映画そのものよりも黒澤明という権威に対する反発心ではないかと思う。以前『泥の河』という傑作があったが、あの映画ですら、後ろ向きだとか、新しいテーマがないとか、わけのわからない非難が出たそうである。映画というのは、極論すれば面白いか面白くないか。『七人の侍』は十分すぎるほど面白かったが、あれが時代劇かとなると、はてどうだろうと首を傾げてしまう。
 時代考証については、多少の瑕疵はあるものの、ほぼ正確無比だという。戦国時代の農民はあれほど弱々しい存在ではなく、時と場合によっては兵士にもなったというから、その点についての誤り(?)を指摘する声は確かにあったらしい。そういう点はあるにしても、あれは時代劇ではなく、やはり歴史劇だろう。
 筒井康隆氏の言葉を借りるまでもなく、時代劇というのは未来に題材をとった物語と逆のベクトルを持つ物語、すなわり過去に題材をとったSFであることは間違いない。本気でそう思っている。昨日もテレビで放送されていた『ラストサムライ』を見れば一目瞭然ではないか。あれをSFといわないのならなにがSFだ(笑)。鎧兜で銃火器に立ち向かうなどいうのは、SF以外では考えられない。幕末の第二次長州戦争(四境戦争)で、鎧兜の装備で攻めてきた幕府軍を軽装の諸隊(奇兵隊)が打ち破ったのである。重たい鎧兜を着て、銃器を相手に戦って、あれほど奮戦できるのなら、これはもう人間離れしたSF世界の住人としかいいようがない。
 たとえば『子連れ狼』である。大五郎の乗る箱車のあらゆる仕掛けは、とてもあの時代のものとは思えない。機関銃のような銃まで取り付けてあるのだ。『子連れ狼』に限ったことではない。他の時代劇でも、江戸末期にも絶対になかったコルトピースメーカーが登場したり、はたまた石でも斬ってしまう刀が登場したり、強烈な小道具目白押しである。最初から時代考証を無視して物語が展開するのである。とりあえず丁髷と着物を着せて(最近は髷もつけず着物も着ていないような登場人物もざらである)刀を持たせても、江戸時代を描いた作品とは誰も思わないだろう……いや、思う人がいるかもしれない。これはから時代劇も最後に、
「この作品は完全なフィクションであり、いくつかの歴史的事実はもとになっていますが、実際の歴史とはなんら関係がありません」
 というテロップが流れるのではないかと思っている。
 時代劇は歌舞伎の延長にあり、人形浄瑠璃・歌舞伎の『義経千本桜』に寿司屋や船宿が登場するようなものだろう。たとえば『真夜中の弥次さん喜多さん』だ。あの映画には時代劇というジャンルの本質があったような気がする。時と場合によっては、オートバイも女子高校生も登場する可能性のあるのが時代劇だ。これから百年後につくられる時代劇があるとすれば、そこには江戸だけではなく、明治、大正、昭和の風俗も一緒くたにされているのではないだろうか。百年後にもし時代劇がつくられていれば、そこには自家用車で移動する水戸黄門や携帯電話を使っている銭形平次、防犯ベルの所持を江戸庶民に訴える大岡越前が登場しているかもしれない。
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カテゴリ: 時代劇

テーマ: TV番組 - ジャンル: テレビ・ラジオ

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Posted on 2007/08/19 Sun. 15:16    TB: 1    CM: 0

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