Gitanの趣味

ひたすら趣味の道を走っています(ニヤリ)

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戦争と戦争のはらわた 

『戦争はらわた』はあのサム・ペキンパーの映画のタイトルである。オリジナルのタイトルは、かなりあくの強い『戦争のはらわた』ではなく、『鉄十字勲章』というすっきりとしたものだった。当然のことだが、オリジナルタイトルのほうが映画の内容がよく理解できる。
 これまでに何度も書いたがサム・ペキンパーという監督は好きではない。しかし、この映画は好きな映画のなかに入っている。第二次世界大戦を、ドイツ軍の側から描いた作品というのは別にこれだけというわけではないが、作品の《こしらえかた》が好きである。
 童謡、『蝶々』に乗って繰り広げられる戦闘場面は音楽と場面の距離がよかった。ペキンパーは黒澤明の熱烈な信奉者だからこのあたりも黒澤明の影響だろう。映像と音楽の対位法と黒澤明はいっていたと思うが、そういうことだと思う。暗い場面には明るい音楽をつけると効果的なのだ。
 しかし、この作品を反戦映画だと思って観たことは一度もない。これはすぐれたアクション映画であって、素材として戦争を使っただけだと思っている。映画全体がペキンパー的な美によって構成された、ペンキパー流のアクション映画だった。
 だから悪いとは全く思わない。しょせん絵空事である。戦争を扱おうがなにを扱おうが、面白ければいいと思う。不快なものは見なければいいだけのことだ。この作品はぼくにとって許容できる。それだけのことである。
 ちなみに戦争を扱った作品としてはあの『プラトーン』よりも好きだ。オリバー・ストーンなら『サルバドル』がいい。しかし、戦争映画としてみれば『地獄の黙示録』には負けていると思う。やはりアクション映画の傑作であり、ペキンパーの本質はアクション映画の監督だと思っている。

 こんなことを書くと年齢がばれそうでいやなのだが、ぼくの父は戦争に行った。さらにぼくが子どもの頃、まわりには実際の戦闘に参加した人たちが、現役で普通に働いていた。映画やドラマではない現実の戦闘に参加した人がいたのである。
 きわめて特殊な状況下であったとはいえ、実際に人を殺したり、殺されかけた人たちが普通にいたというのは、考えてみるとものすごい話だ。その人たちは特殊な人たちではなく、ごく普通の人たちだった。いま思うと、あんなに平凡な人たちに銃を持たせ、戦場に送りこみ、闘わせたというのは、理非曲直をこえて残酷な話だと思う。
 戦争を批判するのであれば、戦争そのものを描かない方がいいと思っている。映像というのは当たり前の話だが人工的なものだ。人が作るものには必ず、作る人間の美意識が反映される――と、ぼくは固く信じている。つまり、どんなに残酷なものや悲惨なものを作っても、ある種の美しさを持ってしまうように思えてならない。
 戦争そのものを描いて、反戦を訴えることは不可能ではないかと思う。『プライベートライアン』の戦闘シーンは迫力満点だった。こんな言い方は不謹慎かもしれないがあえて言えば、訴えているものがなんであれ、あそこにあったのは、間違いなくある種の面白さだった。

 戦争の悲惨はもちろん、戦場で戦う兵士の身の上におきている。しかし、戦争の惨禍に対してただ受身でいるしかない一般人に降りかかる悲惨を描くことのほうが、より戦争の悲惨は強く訴えることができると思う。
 忘れられない作品がある。『トビー』という作品である。漫画である。津雲むつみさんの作品だったと思う。この作品については以前「mixi」でも書いた記憶がある。あるいはこのブログだったか……とにかく、忘れられない作品であることは間違いない。
 この作品は津雲むつみさんの未発表作品集(アマチュア時代の作品だったろうか)のなかに収められていたように記憶している。そのほかにも作品はあったが、この作品が特に印象に残った。若いころに読んだこともあるのだろう。軽いショックを受けた。こんなやり方があるのかと思った。
 内容を簡単に説明すると、戦争で父を亡くしたトビーという少年がいる。周りの大人たちは少年を気遣い、その事実を伝えないようにしている。だが、一人の大人がトビーを思うあまり、父が戦死したことを伝えてしまう。
 しかし、トビーは父が戦死したことを知っていた。戦争が父を奪ったという怒りをどうすればいいのかトビーにはわからなかった。戦争は現実だが、戦争というのは、いってみれば実体のない怪物のようなものである。だからトビーには誰を憎めばいいのかわからなかったのだ。
 そこでトビーは最初に父の戦死を自分に告げた人を憎もうと決めたのだという。トビーの怒りは理不尽かもしれない。だが、戦争はトビーには関係のない大人の都合でおきた。だからトビーに父の戦死を伝えた人物も、大人という一点でトビーに憎まれても仕方がないのかもしれない。
 こんな形で、戦争に対する怒りをぶつけた作品は初めてだった。新鮮な驚きと感動を覚えた。戦争から遠く離れた場所で、戦争への怒りや悲しみを静かに訴える作品というのは、深いものを持っているように思えてならない。
 たとえば『かくも長き不在』がある。『禁じられた遊び』もそうだ。『母べえ』もそうだろう。黒澤明の『生き物の記録』も名作だと思う。この作品についていえば、ぼくは『黒い雨』よりも買っている。毎年、八月が近くなると戦争について考えることが多くなる。
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カテゴリ: マンガ

テーマ: 漫画の感想 - ジャンル: アニメ・コミック

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Posted on 2009/07/17 Fri. 13:03    TB: 0    CM: 0

あしたのジョーにもなれなくて 

 と、歌ったのはあの三上寛である。といっても知らない人の方がいまや多いのかもしれない。ちなみにタイトルは『夢は夜ひらく』である。あの藤圭子さんの名曲だが、そこに三上流の歌詞をつけている。どんな歌詞か? たぶんネットで読むことができると思う。興味のある方は調べてみてください。
 さて、『あしたのジョー』はリアルタイムで読んだ世代だ。記念すべき第一回を読んだことがある。語り継がれる名作になるとは思いもしなかった。つまらなかったというのではもちろんない。子供にはわからなかっただけだ。はじめて読んだとき、これは喧嘩が強い少年の物語かと思った。事実、喧嘩が強い少年の物語でもあるのだが。

 矢吹ジョーと激闘の末死んで行ったボクサー力石徹の葬儀は実際に行われた。架空の人物の葬儀が行われたというのは時代もあったと思う。が、やはり作品にそれだけの影響力があったのだと思いたい。たんなる酔狂だけではここまでやらないという気がする。
 葬儀委員長は、これも有名だが、寺山修司だった。寺山修司は『ボクサー』という映画も撮っている。主演は何かとお騒がせな清水健太郎だった。もちろん当時は何かとお騒がせではなくちょっと影のあるアイドル風の若者だった。菅原文太さんも出演していた。寺山修司の映画にしてはわかりやすい映画だった。

 ボクシングを題材にした物語は多い。『あしたのジョー』の逆を行った『がんばれ元気』という健気なボクシング少年のマンガあった。
 映画では『傷だらけの栄光』という名作がある。ポール・ニューマン主演だった。若き日のスティーブ・マックイーンがチョイ役ででていた。それから『ロッキー』がある。『レイジング・ブル』がある。名作がけっこう多い。
 ボクサーを扱った物語はいったいどれくらいあるのだろう。ボクシングというスポーツを題材にとるのは、栄光と挫折がドラマチックだからだろうか。ハングリースポーツと呼ばれるだけあって、たいていは貧しい少年(青年や中年の場合もあるが)が主人公だ。
 自分の拳だけで、持たざる者が栄光と富を勝ち取るというのは、成功しても失敗しても劇的になるに決まっている。たしかになかには狙いすぎてるかな、と思わせる作品もあるにはある。しかしまあこういったものは個人の好みだ。

 異色のボクシングマンガ(劇画)で思い出すのは『青の戦士』だ。原作狩撫麻礼、作画谷口ジローというこの作品に登場する主人公の名前は礼桂。これで《レゲ》と読む。金や栄光のために闘うのではないという点で、この主人公は異様だった。
 礼桂は常に酒を飲んでリングに上がる。理由は相手にハンデをくれてやるためだ。自分の異常な強さを知っている礼桂は、うっかり連勝してチャンピオンになり、試合数を減らされることをなによりも恐れている。なんとも不可解な精神構造の持ち主だ。
 つまり礼桂は、我々凡人には理解できない哲学的で難解な理由で闘い続けている。礼桂はとにかく喋らない。その寡黙さは映画『さそり』の主人公なみだ。全編を通して二言くらいしか喋らない。記憶にあるセリフは、
「酒がたりねえ」
 紆余曲折があり、礼桂は世界チャンピオンを倒すことになる。下から上へというボクシングものの骨格はここでも健在だ。しかし、礼桂はチャンピオンを倒してもチャンピオンベルトを巻くことはない。物語のラスト、礼桂はひとりアフリカに向かう。
 個人的には大好きな作品だ。ぼくにとっては大傑作だが、人の評価は知らない。不思議な作品であることはまちがいない。ボクシングものでありながら主人公が戦う理由をハングリーにも愛情にも求めなかったという点で、強く印象に残っている。

カテゴリ: マンガ

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Posted on 2009/02/21 Sat. 20:37    TB: 0    CM: 0

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